長編

□Chapter3
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朝、昏々と眠る一方通行の額に何かひんやりとしたものが当たった。
それはがさり、と音を立て床に落ちる。
一方通行は気だるい身を起して床を覗きみた。
プレゼント包装された物体だった。

「……?!」

頭が真っ白になった。
朝、プレゼントらしきものが枕元に置かれていることなど初めてだ。
混乱する頭でこれが何か思いだそうとするが、身に覚えはない。
ただ唯一心あたりがあるとするなら、

「サンタクロース……?」

だがそんなものは一般的には両親の役割と言われている。
加えて一方通行にはそういった存在はいない。
しかし一人、そういうことをしてくれそうな人がいた。

「ナマエ、か?」

包みを持って部屋を出、居間やナマエの部屋を見てみる。
そこでナマエが外出しているであろうことを思い出す。

「……」

十中八九自分宛てと考えて良さそうだ。
開けちまうか。
リボンを解き、丁寧にラッピングを解いていく。
肌触りの良いマフラーだった。
嬉しさに口元がニヤけてしまう口元を押さえる。
おそるおそるマフラーを広げ、自分の首に巻いてみる。

「……あったけェ」

目を閉じてその感触だけを享受する。
嬉しさが許容を超えそうだ。
ナマエを抱きしめたい、今すぐ。
彼女の帰りが待ち遠しかった。




昼時に近い頃、ナマエが帰って来た。
こういう時、どういう顔をしたら良いのだろう。
少し困りながらナマエにマフラーを見せた。

「ナマエ。これ、ありが……」
「あ、それ昨晩サンタさんがね、プレゼントあげるの忘れてた子がいたって慌てて置いていったんだよ」

信じてるとでも思っているのだろうか。
一方通行は苦笑した。

「で?オマエにはくれたのか?」
「私は、良い子じゃないからなぁ」

そう言って苦笑したナマエに包みを渡した。
昨日渡しそびれたブランケットだ。
ナマエは目を皿のように開いている。

「俺ンとこに置いてあったぜ」
「わあ、ありがとう」
「礼を言うのは俺じゃねェだろ?」
「あー、なんかやられたかも」

顔を見合わせ、互いに笑った。

「開けていい?」
「どォぞ」

ナマエはがさがさとラッピングを解いていった。
彼女の除々に変化する表情を見ていると、目が離せなくなる。
ナマエはブランケットを広げた。

「わあ、可愛い!あったかそう!」

彼女は早速肩に羽織ってみた。
その様子はもこもこしていて愛らしい。
喜んでもらえてよかった。
一方通行は心底安心した。

「なんだかプレゼントちょっと似てるね」
「まァ、な」
「お互いこれであったかい冬が過ごせるね」
「ン。俺な、すげェ嬉しい」

一方通行はそう呟いてナマエを抱きしめた。
ブランケットのせいでいつもより柔らかい。

「私も。すごい嬉しい」

目を閉じて彼女の声を聞いた。
オマエのお陰で今年もあったけェよ。




夕食後、イルミネーションを見るため二人は外に出た。
昨晩と同じく気温は低い。
一方通行はプレゼントされたばかりのマフラーを巻いていた。
ここは科学の最先端を駆使したイルミネーションが一番美しい通りだ。
学園都市の技術使った夜景を一目見るため、外から来る者も少なくない。
科学の街がキリストの生誕を祝うというのも少々変な話ではあるが。
ツリーやベルなどクリスマスをモチーフにした装飾は見るものを圧倒させた。
くるくると歩きながら満天の輝きを見上げ、ナマエは感嘆の声を漏らした。

「きれーい!」
「結構すげェモンだな」
「なかなか見る機会がなかったんだよね。見れて良かったなぁ」

白い息を吐き、ナマエはうっとりと目を細めた。
二人は折り返し地点に着いたところだった。
夜景を眺めつつ、元来た道を引き返す。

「来年もまたデザインが変わるんだよね?」
「そォだろォな」
「今のうちから来年が楽しみだなぁ」
「来年、か。来年も期待してイイのか?」
「そりゃあ今年よりすごいことになるんじゃないかな?」

この鈍感、と一方通行は毒づく。

「違ェよ。来年も二人で来れンのか?」
「嫌だった?私は一方通行と来たいけど」
「それならイインだ」

小指を触れさせ彼女の指先と絡めた。
手袋をしてない手は互いに冷たいが、ナマエは嬉しそうに笑った。
好きだと言ってしまいそうだった。
しかし彼女から男として見てもらえなければこの関係は終わってしまう。
臆病でいい。
このままナマエと過ごせるならそれで幸せだ。




to be continued...
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